FU-CHING-GIDO

TUBA DRUMS GYPSY ROCK

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音楽を通じて出会った場所と人々への思いから生まれた新しい曲たち。 ふーちんとギデオンが語る、この約2年半とニューアルバム『3』。 (PART.1)

ふーちんギドの新作が完成した。『Earthlings 地球人』から約2年半ぶり。3枚目のアルバムだから、タイトルはシンプルに『3』とつけられた。



この2年半の間にも、ふたりはあちこちでライブを重ねた。特に2018年は海外でのライブも多く、その経験が自分たちを成長させたという実感を持っているようだ。



ギデオン「去年は本当にいろんなところに行ったね。6月からヨーロッパツアーがあって、ドイツとデンマークとフェロー諸島とマケドニアでライブをやって。で、帰ってきてフジロックに出て、11月にはオーストラリアに行って」



ドイツとマケドニアではライブハウスに出演。フェロー諸島(*北欧の沖、ノルウェー海と北大西洋の間、アイスランドとノルウェーの中間付近に浮かぶ島)では「Summartónar 2018」、オーストラリアでは「Bendigo Blues & Roots Festival」というフェスに出演した。



ふーちん「国によって文化が違うし、客層もさまざまだけど、どの国のひとたちも純粋に楽しんでくれてるのがわかったし、演奏が終わるといろんなことを訊いてくる。ドイツは若いひとが多かったんですけど、普段どんな生活をしてるのかとか、どうやったらドラムと別の楽器を同時に鳴らせるのかとか、どういう音楽教育を受けてきたのかとか、音楽だけで食べていけるのかとか(笑)、根掘り葉掘り訊かれましたね」



ギデオン「マケドニアはインディペンデントで活動している若いミュージシャンたちが自分たちで文化を作っている感じがすごくした。日本と違って音楽を文化と捉える考え方がしっかりしてたし、ライブハウスの音響もよかったね」



ふーちんギドは現在マネージャーがおらず、海外公演に関するスケジュール管理と確認はギデオンが行ない、場所によってはPAまわりもギデオンが自ら調整。当然、楽器運びも自分たちでやっている。



ふーちん「海外には最低限の楽器を持って行くんですけど、それでもチューバと、ドラムまわりはスネアとペダル、あとは鍵盤ハーモニカとそのPA機材といったふうにけっこうな荷物で。エフェクターとパソコンとフットペダルが重くて、いつもえらいことになってました(笑)。飛行機が飛ばないといったハプニングもあったけど、でもハプニングはあって当たり前だし。鍛えられますね」



フェロー諸島では、中心部から船で40分ほど離れた「20人くらいしかひとが住んでなくて、お店はひとつしかない」小島にも渡って演奏した。



ふーちん「お客さんも一緒に船に乗ってその島に行ったんです。簡易的なドラムのセットをお客さんが一緒に運んでくれて。で、風がものすごく強くて、シンバルが飛ばされそうになるなかでセッティングして」



ギデオン「パフィンという珍しい鳥がいるんですけど、それを見に行ったひとが強風に飛ばされて死んじゃったという話があるぐらいで。そこで演奏が終わって、みんなで観光船に乗って帰るはずだったのが、ミスブッキングで人数オーバーになって“乗れません”ってことになり、僕たちだけ島に取り残された。ドラムだけ観光船に乗って先に行っちゃって……」



ふーちん「そう。それで結局、小型の船に乗って帰れることになったんだけど、観光船じゃないから吹き曝しだし、ものすごく揺れるし、バーにつかまってないと海に投げだされるっていうんで必死でしがみついて。あれは本当に怖かった。怖かったけど、でも生まれて初めて見るような大自然で、景色がすごくキレイだったんですよ。その気持ちを曲にしたのが“Mykunes”なんです」



そんなふうに、音楽を通して出会った場所、見ることのできた景色、触れ合うことのできた人々、そのとき感じたことが、アルバム『3』の曲になっている。音楽での出会いがまた新しい音楽になるという理想的な循環だ。



ギデオン「いろんな場所に行って、いろんな友達ができました。みんな、すごく面白いひと。すごくいいひと。最近ニュースを見ると、ほかの国との問題ばかり取り上げられているけど、実際に行って接してみるとみんな優しい。それで前のアルバムは“僕たち、みんな同じ地球人”というテーマで作ったけど、今回はその気持ちがもっと強く出ています。なぜなら、ふたりであちこち行って、“やっぱりそうだよね”って改めて思ったから」



ふーちん「いま、差別の問題、偏見の問題がすごいじゃないですか。それは日本に限らず世界中であるけど、そういうのを持つひとって自分の住んでいるところから動いてないだけで、外に行けば違うってわかると思うんです。私がよかったなと思うのは、音楽、楽器という道具があって、ふーちんギドがあることで、いろんな場所に行って、いろんなひとと触れ合える。それによって真実がわかるというか。で、それをまた音楽にしてみんなに届ける。その作業をいままでやってきたし、これからもやっていきたいし。それはアルバムのテーマというよりも、ふーちんギドのテーマなのかもしれないですね」



制作にあたっての前作からの変化と言えば、まずギデオンが曲ごとのキーワードを予めノートに書いていたこと。よって曲のイメージを(エンジニア含めて)共有しやすかったそうだ。



ふーちん「あのノートがあって本当によかった。私がそのイメージで演奏できるっていうだけじゃなく、エンジニアの松下さんにも伝わるので、“じゃあこのシンバルを使うといいんじゃないですか?”“このスネアが合うんじゃないですか?”って持ってきてくれて、それがすごく助かった。前作はとにかく時間内に録ろうってことで、1曲1曲の音響のイメージまでは考えずに録り始めちゃったんですけど、今回はそのノートがあったから、やれることも増えましたね」



レコーディングは池袋にある「STUDIO Dede」で行なった。エンジニアは松下真也。オーナーは元ドラマーでもある吉川昭仁。それだけに曲に対する理解度が深く、ふたりから的確なアドバイスがあったようだ。



ギデオン「今回はヘヴィなロックが多いんだけど、マイクと楽器との距離、空間の距離感みたいなことをすごく考えてくれたよね」



そう、今回、特に音の奥行きを感じられるのはそういうことだろう。そしてギデオンが言うように、確かに今作、ヘヴィなロック曲が前より増えている。



ふーちん「“ロックっぽいものを作ろう”と意識してそうなったわけじゃなくて。ドイツやオーストラリアで元気なひとに出会ったとか、マケドニアの音楽文化に刺激を受けたとか、そういうことがエネルギーになっているから、自然とそれが音に反映されたんじゃないかな。あとは、やっぱりそういう曲をやると、どの国のお客さんも喜んでくれるっていうのがあって」



ギデオン「ライブを観てるひとが驚いているのを見るのが好きだし、楽しい。みんな、ふたりだけでこんなヘヴィなロックもやるってことにビックリしてるみたいで。僕はいろんなバンドのライブを観るけど、だいたい2曲観ると、“ああ、このバンドはこんな感じなんだな”ってわかる。でも僕たちのライブは、そうじゃない。“こんな曲の次に、こんな曲がきたぞ”ってビックリするものになっているはずだし、そういう予測のつかなさをアルバムにも反映させたかった」



ライブのダイナミズムを録音ブツにも反映させるのは、ふーちんギドにとって大前提と言えること。もちろん今作もそう。だから楽曲は基本的にまずライブで何度か演奏しながら形にし、その上でレコーディングに臨んでいる。



ふーちん「ライブでやりたいから曲を作っている。だからライブでやれないことはレコーディングでもやらない。ライブでできる範囲で遊んでるんです」



ギデオン「それは僕たちのポリシーだね。オーバーダブとかやったら曲としてはもっと面白くなるかもしれないけど、ライブでできないことはやりたくない。それだけにミックスは大事だけど(*ミックスはギデオン自身の手によって行われている)」



ふーちん「私の個人的な考えですけど、CDのほうがいいねって言われるのは嫌なんです。CDもいいけど、やっぱりライブがいいねって言われたい。そのためにもCDをいいものにして、自分たちでそれを超えていきたいんですよ」



そんな意欲も反映させたアルバム『3』。ジャケットのデザインはふーちんの手によるもので、骸骨人形も彼女の手作りだ。



ギデオン「2年前に僕、少しだけメキシコシティに行って、メキシコが大好きになりました。メキシコには日本のお盆と同じように亡くなったひとと会うことができるお祭りがある。実は去年、僕の友達が亡くなって。“The Mountainside”はその友達に捧げようと書いた曲だけど、でも悲しいだけじゃなくて楽しかったこととかいろんな思いがそこには入っている。そういう話をふーちんにしたら、この骸骨の人形ができてきた。すごく感動しました」



この骸骨たちは、アルバムのオープナーでリード曲でもある「The Bouningen」のMVで、演奏しながらほかの骸骨たちと動き出す。可愛さと不気味さ。楽しさと物哀しさ。軽妙さとヘヴィさ。しかもどこかファンキーさもある。そんな要素が絶妙に混ざり合ったアルバム『3』の象徴的なMVであり、アートワークであるなとそう思う。



アジアからメキシコまで。この世からあの世まで。これを聴けば、イメージのなかでひとっ飛び。笑って、泣いて、さあ、時空の旅を楽しもう。



(内本順一)





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