FU-CHING-GIDO

TUBA DRUMS GYPSY ROCK

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音楽を通じて出会った場所と人々への思いから生まれた新しい曲たち。 ふーちんとギデオンが語る、この2年半とニューアルバム『3』。 PART2/ふたりによる全曲紹介

1.「The Bouningen」


アルバム『3』のリード曲。ふーちんギド流ファンク·ナンバーだ。


ギデオン「ボウニンゲン(棒人間)という言葉がすごく好き。英語だとスティック·パーソンね。骸骨は人間の基本の形だから。それにボウニンゲンというと、それが男なのか女なのかもわからないのがいいなと。音楽的には、いままで僕とふーちんでファンクをやったことがなかったから、ファンクをやってみようということで。でもただのファンクじゃないよ。これはスーパー·ファンク。どういうことかというと、リズムが一定ではない。あちこちに飛んで展開していく。そういうのが僕は大好きだから」


ふーちん「私もそういうのが大好きなんだけど、難しいんですよ。なぜなら日本人が本来持ってないグルーブだから。だからちゃんとできてるかどうかはなんとも言えないけど、ライブでうまくいったときの盛り上がりはすごいんです、これ。毎回、違うように演奏できる曲」


ギデオン「ファンクのグルーブなんだけど、ディストーションかけたシンセの気持ち悪い音が入ったりしていて変態的でしょ。ファンキーなだけじゃない何かがある」



2.「放浪 Hourou」


ふーちん作曲によるもののひとつ。ときに急いだりしながら、でもズンズンと自分(たち)の進みたい道を楽しんで進んでいく、そんなイメージがある。


ふーちん「絶対自分にはできないけど、私はずっとジプシーとかロマのひとたちの生き方に憧れがあって。ロマのひとたちの本も読んで、“こういう生き方をしてみたい!”という気持ちが最高潮に達していたときに、この曲を作ったんです。本場のひとが聴いたら“なんだこれ?”って感じだろうけど、ロマのひとたちのもともとのリズムとか、クレズマー音楽の迫ってくる雰囲気とか、いろんなものを混ぜて自分っぽく作りました」


ギデオン「真ん中あたりはちょっとインドのクラシック音楽みたいな感じにもなるよね」


ふーちん「そう。ちょうどその頃、インドのMusafirってバンドにハマっていたので」



3.「Mykines 1」

4.「Mykines 2」


この2曲もふーちん作曲。昨年フェス出演のために行ったフェロー諸島での経験がもとになっている。「Mykines 1」はふーちんギド史上もっともハードでグランジなロック曲。「Mykines 2」は嵐が去ってほっとしたというような曲だ。


ふーちん「“Mykines 1”が早くて荒々しいのは、フェロー諸島から渡った小さな島から小型の船に乗って帰るときの様子を表わしてます。強風で海に投げ出されそうになった、その体験のまんま。途中、ギドさんのチューバでキレイな感じが表現されるのも、あのときに見た景色そのもの。“キレイだね”って言って遠くを見てると、急に船が揺れて波の飛沫がザバーーってかかったりするという。“Mykines2”のほうは、島におりたときの気持ちを表してます。“本当にこの島に来てよかったな”って、あのとき純粋に思って」



5.「Lewes」


映画を観ている感覚にもなる、エキゾチックで奥行きを持った曲だ。ギデオン作曲。


ギデオン「初めて10代の頃のことを思い出しながら作った曲です。僕はイギリスの学生時代、家から電車で1時間半くらいかけて高校まで通っていた。Lewesはその町の名前。まだ大人になりきれなかったあの頃の僕は、そこで特別な時間を過ごしてました。そのときの先生との関係や音楽との関係のことを思い出して書いた。始まりの音はそのとき乗っていた電車のドアの音。あの音がなんだか懐かしくて」


ふーちん「初めて聴いたとき、どこかの民謡っぽいなって思った。リズムも不思議な感じだったし。頭にベースがなくて、バスドラが後ろに。日本人は頭で打つのが普通だから、ヘンな感じなんですよ。ライブでやっているとトランス状態に入ったみたいになる」



6.「Suisei」


アフリカ的だったりインド的だったりと、これも国籍不明感のある曲。躍動的なリズムと浮遊感ありの音の重なりが、“ここではないどこか”を表現しているよう。


ギデオン「(長野県の)松本に“彗星倶楽部”という大好きな居酒屋があるんです。そこでライブの打ち上げをやったりして友達が飲んでる様子を、僕はときどきちょっと距離を置いて見ながら“ああ、いい時間だな。みんなが笑っててステキな夜だな”って思うときがあって。そんなところからできた曲」


ふーちん「“The Bouningen”と一緒で、これもグルーブで遊んでる。早くなったり遅くなったりするんだけど、ギドさんと私は不思議とその呼吸が合うんです。合わないひととやったら絶対うまくできない曲ですね。合うから楽しくできる。これ、北アフリカのひとたちが自由に演奏している映像を見て刺激を受けたままレコーディングした曲なんですよ。北アフリカのひとたちが鍋の蓋みたいなのをガシガシ叩いてリズムをとってて、これこそ音楽だ、これがグルーブだって思ったから、壊れた楽器をスタジオに持っていって録ったんです」



7.「Crow&Alice」


重厚なロック曲。まるでバンドサウンドだが、ふたりだけでこれをやってるのだから舌を巻く。


ギデオン「“Crow&Alice”というのは、僕が子供のときに見ていたBBCの子供番組のタイトルから付けました。コワイカワイイ(怖いけど、どこかカワイイ)アニメ番組で、曲にそういうイメージがあったから」


ふーちん「ハードロックっぽい感じもあるので、ライブで遊べる曲ですね」


ギデオン「マルコム·ヤング(AC/DC)のギターを鍵盤ハーモニカでやってるイメージかな」



8.「The Mountainside」


ギデオン作曲。ふーちんの鍵盤ハーモニカの音色が優しく心に沁み入る。


ギデオン「亡くなった友達を思って書いた曲だけど、悲しいだけじゃない」


ふーちん「ギデオンさんから“楽しいひとだった”と聞いていたので、私も哀しい感情を込めすぎないよう演奏しました」


ギデオン「雨の音はふーちんの部屋でiPhoneで録ったんだよね」



9.The Ocean


レッド·ツェッペリンの5thアルバム『聖なる館』に収録されていた曲のカヴァー。原曲を聴いたことのないひとには、ふーちんギドのオリジナルのように思うかもしれない。


ギデオン「僕はレッド·ツェッペリンの大ファンなので、これを聴く度にバンドでカヴァーしたら面白いんじゃないかって思っていて。でも僕たちがやるにはどういうアプローチがいいだろうと半年くらい考えて、できたのがこれ。アウトロを変拍子でジプシー音楽っぼくやるのが僕たちっぽいかなと」


ふーちん「あのアウトロを聴いて、“いい!”って思った。やっぱり元のと同じようにやってもしょうがないし、カヴァーするからには、ふーちんギドでやることの意味があるものにしないとダメだから」



10.The King


展開が読めず、こんな感情が込められていると決めつけることもできない曲だが、果てしなく広がっていく感覚がある。


ギデオン「ペンタトニック·スケール(五音音階)の曲が僕は好きで。ハッピーだけど、サッド。そんな気持ちを表現してます。前にモンゴルのフェスに出たとき、そこには反響する建物がなんにもなくて……」


ふーちん「本当に何もなかったよね。ビルとか高いものが何もないから、山の向こうまでそのまま届くかなって感じで」


ギデオン「その、音が広がっていくイメージをキープしながらこれを作った。あと、ドラムにディレイをかけて、途中でレゲエのダンスホール·スタイルみたいにしたりもして。ライブでやるのが少し難しいけど、やりがいがあるよね」


そんな全10曲。前作『Earthlings 地球人』はふーちん作の楽曲とギデオン作の楽曲が比較的はっきりと区別のつくものだったが、今作はどちらの作曲ということに関係なく、どれもふたりがより一体化した“ふーちんギドの楽曲”という印象がある。頭で聴くのではなく、心を開いて聴くほどに楽しめる、『3』はそんなアルバムだ。


(内本順一)

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