FU-CHING-GIDO

TUBA DRUMS GYPSY ROCK

TUBA DRUMS GYPSY ROCK

音楽ライター内本順一さんによる、Earthlings ライナーノーツとインタビュー Part1

音楽ライター内本順一さんが「ふーちんギド」について、ライナーノーツを書いてくださりました!!
実際にお会いし、ふーちんギドについてたっぷりと語り合いました。とても素敵な内容となっております。
今回とNEW ALBUMリリース後、2回に分けて発表いたしたします。
是非是非!ご覧ください。

 

ふーちんギドは、“ドラムを叩きながら鍵盤ハーモニカを演奏する”ふーちんと、“チューバを吹きながら足でキーボードを鳴らす”ギデオン・ジュークスによるデュオ。手と足と口。ふたりとも、使えるところは全部使って演奏する。そのうち頭やら鼻やらも使って音を鳴らし始めるんじゃないだろうか?!

国籍も性別も異なり、歳も離れているふたりが、レコーディングやライブ・セッションの場で会って意気投合したのは2013年のこと。初めはチャラン・ポ・ランタンのアルバム『ふたえの螺旋』に収録された「サーカス・サーカス」のレコーディング現場だった。

「僕は別の部屋にいて、ヘッドホンでドラムの音を聴いていたんです。そしたらそのドラムが凄くて。“これ、誰?  すごくいい感じ!”って思ってのぞいたら、それがふーちんだった」とギデオンさん。一方、ふーちんは、「自分の思い描いている曲のイメージにピッタリくるチューバの音で、“ああ、このチューバの人は歌心があるんだな”って思ったんです。しかも2テイク録ったらもう完璧で。“この人、仕事、早い!”っていうのが最初の印象でした」と振り返る。

また同年6月に吉祥寺STAR PINE’S CAFÉで行われた<ジンタらムータSpecial みわぞう祭りvol.2>でもふたりは一緒になったのだが、そこで「いいなぁ、ギデオンさん」と思っていたふーちんに「ふたりでなんか一緒にやったらええやん」と勧めたのが、チャラン・ポ・ランタンのマネージャー、ねこ太氏。それから改めて連絡を取り合い、「チャレンジとして、ふたりでやってみよう」ということになったそうな。

「まず、カヴァーでお互いができそうなものを一緒にアレンジしていったんですけど、それがすごく自然で」(ふーちん)

「うん、自然だったね。そのときはまだ、ふーちんが鍵盤ハーモニカもできるってことを知らなかったんだけど」(ギデオン)

「あ、私も知らなかったよ(笑)。だって、ギデオンさんに言われたことで思いついて、それから練習したんだから。“できるできる!”って簡単に言っちゃったけど、ドラムを叩きながら吹くのって意外とたいへんなんだなって、やってみて気がついた」(ふーちん)

 ここで改めて書いておくと、ギデオン・ジュークスは東京に住んで今年(2017年)が10年目となるイギリス人チューバ奏者。クラシックからフリー・ジャズ、舞台やミュージカルでの演奏からJ-ポップ系アーティストのサポートまでと幅広く動き、2005~2007年に4回〜5回シガー・ロスのワールド・ツアーにも参加。これまでセツブン・ビーン・ユニット、渋さ知らズオーケストラ、シカラムータ~ジンタらムータといったバンドのメンバーとしても活動してきた彼は、作曲も手掛け、世界各国の伝統音楽~民族音楽についての知識も非常に豊富な広角型ミュージシャンだ。「いろんなことをしてきたけど、ふーちんギドは本当にクリエイティブで、ふたりだけでいろんな楽器を頑張る。すごく自由で楽しい!」。

 一方、ふーちんは、チャラン・ポ・ランタンとの活動(チャラン・ポ・ラタンと愉快なカンカンバルカン、チャラン・ポ・ランタン・マーチ)でよく知られるほか、リベラシエロのメンバーとしても活動しているドラマーだが、自分が主体となるバンドは、ふーちんギドが初めて。作曲を始め、ロゴ・イラストレーションを考えたり、バンド運営的なところも自身で行うようになったりしたことで、「一気に世界が広がりました」と言う。「ギデオンさんがもっているリズムの種類に私の知らなかったものがたくさんあって。それによって自分のリズムも広がったし、初めてやれることがいっぱいあるんです。しかも、ふたりでやれば絶対に合うってわかっているから、新しい挑戦が自然にできる。“今度はこんなリズムを使って曲を考えてみよう!”って楽しみながらやれるのがいいんです」。

 そんなふーちんの言葉を受けて、「まだまだ、ふたりでやれることがいっぱいあるね」とギデオンさん。ミニマルな編成にして、可能性は無限大なのだ。

 ふーちんギドの音楽の魅力を一言で書くなら、「え?  これとこれを合わせちゃうの?!」といった意外性の面白さだろう。そもそもチューバとドラムという成り立ちからしてそうだが、「いや、普通、それとそれの組み合わせはないっしょ?!」といったものが、ありになる。ありになるというか、むしろクセになる。バニラアイスに醤油。ようかんにバター。試してみたら、おやまあ、意外とイケるじゃん。ってか、やめられんな。そういう感じだ。

こんなリズムにあんなメロディ。その掛け合わせから生まれる、“ここにしかない音楽”。1曲のなかに、緊張と弛緩、丸みと尖がり、可愛さと毒気、軽妙さとヘヴィさが共存し、どっちの要素が多く顔を出すかは曲にもよるし、ふたりの加減でも変わってくる。そして「こんなの聴いたことない」ってな驚きがありながら、同時にどこか懐かしさもある。そういうふーちんギドの音楽は、例えばジャズとか民族音楽に耳が慣れてる音楽マニアを唸らせることもできるけど、何も知らない無邪気な子供を躍らせることもできるものだ。そこに理屈はなく、音楽に対して身構えない人ほど楽しくなれる。

ふたりは2016年6月に韓国で公演したり、モンゴルの野外フェスに出演したりもしたのだが、韓国の観客たちはリズムに反応して熱く激しく盛り上がり、モンゴルでは音楽を気に入った遊牧民たちが用意していたシートにふたりを呼び入れて家族のように接してくれたりもしたそうだ。「その場所その場所で、反応の仕方が全然違うのも面白いね」とギデオンさん。

 とっても開かれていて、自由さの感じられる、ふーちんギドの音楽。だけどもちろん、そこにはふたりなりの基準だったりルールだったりポリシーだったりがしっかりある。例えばこんなことだ。

「フリー・インプロとかもできるけど、ふーちんギドで僕はそれをやりたくない。ちゃんとバンドのサウンドをやりたい。で、曲はポップスみたいに大体3分くらい。エンディングもちゃんと作る」(ギデオン)

「1曲のなかのきちんと展開していく部分と遊びの部分のバランスの捉え方が、私とギデオンさんは一緒なんですよ。このぐらいはフィックスしておいて、このぐらいはユルくしておきたいという、その割合に対しての考え方が不思議と一緒で。そういうの、大事だなって思う。私はフリー・セッションとかも好きだけど、ダラダラ長いのはもともとあんまり好きじゃないんです。あと一番気をつけたいのは、小難しい音楽にはしないということ。どこの国の人でも、大人でも子供でも楽しめる音楽でありたい。そういうのを目指してますね。“なんか愉快だから”って思って観てくれる人が増えると嬉しい」(ふーちん)

(内本順一)

内本順一

エンタメ情報誌の編集者を経て、90年代半ばに音楽ライター・デビュー。一般誌や音楽ウェブサイトでレビュー、コラム、インタビュー記事を担当し、シンガー・ソングライター系を中心にライナーノーツも多数執筆(プリンス、ホセ・ジェイムズ、ノラ・ジョーンズ、アウスゲイル、プリシラ・アーンほか)。ブログ「怒るくらいなら泣いてやる」で連日のように音楽生活をレポート中。

内本順一さんブログ
https://ameblo.jp/junjunpa/

ツイッター
https://mobile.twitter.com/umjun1

COPYRIGHT 2013-2017 FU-CHING-GIDO RECORDS